「ちょっと指名入ったから手ぶらで○室行ってきてー」
店長(受付)の暢気な声が待機室に通った。ルームの番号だから今回はホテルじゃないのかと安心したけれど、また手ぶら。手ぶらでいいっていう客多くない!?
訝しみながら向かう。
扉を開ければそこにいたのは「裸・目出し帽・黒いトランクス」の男。
間 違 え ま し た 。
しばし止まっているとマスク男は私を招き入れ、とりあえずソファに座り、お茶だのお菓子だのを並べ始めた。
人って見た目に寄らないんだな……。
そんなどうでもいいことを考えた。(絶対に間違っている)
着替えてほしいというのでなにかよくわからない衣装的なものに着替える(スパッツっぽい光沢のある素材)と、徐に始まる「技」の練習。
「腕を伸ばして、足はここに……そう!そうです!」
「……あ、ありがとう」
「筋がいいです!もう少しこうしてみて……ああ、いいッ!」
「え?……あ、そうなの……?」
なにがいいのかさっぱり伝わってこないが、どうもそんな私を相手にしてもマスク男はいいらしい。まぁ相手が喜んでいるならいいか……と、どうにも解せないままプレイは続く。
「じゃ練習も終わったことだし、本番行きましょう!」
いや一生練習でいい。ていうかいくつも形を教わったけどたぶん1~2個くらいしか覚えていないと思う。それに危なくない?
そんな私の心配を他所にマスク男は笑顔で(顔は見えないけど)こう言った。
「では本気でいくんで、本気で負かせてください!」
「え、いやいや、……え?」
本気。本気とは。ていうかどう考えても体格差とかあるんだし無理でしょ。マジで言ってるの?いや目が真剣だ。いやでもさ、無理くない?
「金的以外はなんでも大丈夫です」
「目潰しもあり?」
「いやそれはなしで」
「えー」
そうやって始まったにわかファイト。こっちはド素人なんだけど、捕まえに来るマスク男が怖すぎて逃げる逃げる。だって怖いんだもん。
「捕まえてもなにもしませんから!」
「じゃもっと柔らかく迫ってきて!」
もはや傍から見ればなにをするプレイなんだかさっぱりである。そもそも柔らかく迫るってなんだ、自分で自分の言葉が理解できない。
とりあえず無事マスク男を成敗して(?)プレイ終了。
世の中にはいろんな人がいるっていうけど、あんなにがっちり筋肉質で背も高くてそれなりに大きい男性が、自分より小さい女性にこてんぱんに負かされたい、そんな癖もあるんだなぁと勉強になった日でした。
どうやったらあんな大きな男の人に金的・目潰しなしで勝てるんだろう。やっぱり護身術とか格闘技とか習いに行った方がいいのかな?そしたら次にマスク男が来たとき、もっとスムースに勝てるんだろうか。
悩みは尽きない。

