2020/10/03 pixivのフォロワー350人記念。
鬼滅の刃/伊アオ
【蝶に濡れる獣】
Twitterでのアンケート結果、新作で甘々だったので、約20,000文字/A5サイズ/32P。
204話までのネタバレあり、原作最終話から2年後の原作軸、R15です。

2020/10/10 23:59までですので、お近くのセブンイレブンまでどうぞ。
印刷代は表紙60円、本文280円です。
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–サンプル–(字下げはシステムが打ち消し中)
小鳥の鳴き声が聞こえている。
「ん……朝……」
アオイは布団の中でもぞりと身動ぎした。暑い夏も過ぎ、季節は秋になろうとしている。昼間に日が照っているときはまだ暖かいが、朝方は夏の名残もない。
覚醒しかけのぼんやりとした意識の中で横の温かい塊に手を伸ばした。そっと身を寄せれば熱いくらいで、あぁこのままもう少しまどろんでいたいなぁ、だなんてつい思ってしまう。
「くぁ……」
頭上から低くて大きなあくびが聞こえてきて、アオイの意識もいよいよ覚醒した。
「伊之助さん、おはようございます」
「……はよ」
まだ眠たそうな声が聞こえてきて、目線を上げると翡翠の綺麗な瞳がアオイのことをひどく穏やかに見ている。
「そろそろ戻らないと駄目ですよ」
「んー……もう少し」
そう言って伊之助はアオイの体をぐいっと抱き寄せた。その力強さにアオイは彼を〝異性〟だと再認識する。目線をちょっと上げれば見える喉仏が、自分たちの過ごした年月を思い出させた。
あの大きな戦いから二年が経過していた。
無惨を倒した後、炭治郎が三月に目覚めてほかの怪我人も落ち着き、そうして鬼殺隊は解体された。産屋敷家の好意で隊員たちには身に余る金子が渡され、その後の職も斡旋されることになり、剣士や隠たちもそれぞれの故郷などへと散っていった。
蝶屋敷はカナヲが賜り、アオイはしのぶから受け継いだ薬学の知識を活かすため薬剤師となった。三人娘もみな看護師として学び、藤の家紋の家からは医師が派遣され、蝶屋敷は一般の診療所として現在は開放されている。
炭治郎と禰豆子、善逸そして伊之助は炭治郎の生家であった雲取山へ共同生活をしに旅立った。ただし痣者である炭治郎は四か月に一度、蝶屋敷にて経過観察をすることになっている。一年に三度、炭治郎と一緒にやってくるのは伊之助だ。話を聞けば善逸は禰豆子を家に一人にしたくないと言って留守番を買って出ているらしい。
カナヲと炭治郎がよく一緒にいるため、アオイは伊之助と過ごす時間が増えた。二人は遠方から来るため検査含め一週間ほど蝶屋敷へと滞在する。
あれはいつだったか。きっかけなんて案外思い出せないものだ。なにかの拍子にアオイと伊之助はひとつ布団で一緒に眠るようになった。とはいっても本当に寄り添って眠るだけ。色っぽいことはなにもない。
十七にもなって色事に興味がないのか、それともアオイに興味がないのかは定かではないけれど、こうして体を密着させてもどうともならないのだ。アオイもすっかり安心しきって一緒の布団に入ることに抵抗もなかった。
とはいえ、恋仲でもないのに炭治郎の手前、体裁も悪い。アオイが起きる早朝に伊之助は客間に戻る、というのが二人の了解であった。
「あったかい」
アオイはふふっと笑って伊之助のはだけた浴衣の胸元に頬を擦り寄せた。さすがに九月、寝るときは伊之助も肩脱ぎをやめ、緩くだがちゃんと寝衣を着ていた。
「なぁ、今日は診療所って休みなんだろ?」
「え? あぁそうですね」
そろそろ離れなければ炭治郎も起きだしてしまう。そう思いながら伊之助の言葉へ気もそぞろに返した。
「午後、ちょっと付き合え」
「え、嫌ですよ。読みたい本もたくさんあるし」
アオイは気合を入れて布団から出る。やはり寒い。着替えて顔を洗い、さて朝餉の支度をしなければ。
「……嫌なのかよ」
くちびるを尖らせ、じとっとした目で見る伊之助は、アオイが頷かなければ布団から動かないといった様子だ。ときおり彼はこういう子どもっぽい態度を取る。見目麗しい青年のそんな態度に心を揺さぶられない乙女などいやしない。
「布団を干すの手伝ってくれるならいいですよ」
げっ、と嫌そうな声が聞こえてきたが、伊之助は「しょうがねぇな」とアオイの提案を了承した。
「着替えるのでほら、早く戻ってください」
伊之助を追い出しアオイは着替える。布団を上げようとしてふわりと伊之助の香りが鼻を掠めた。
緑と土のにおい。
アオイは伸びをして、そうして水場へと顔を洗いに向かうのだった。
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–サンプル–


