2014年1月25日、山咲美花さんプロデュースのFetish D Night(フェティッシュでないと)が開催されました。
場所は青山にあるcafe ATLANTIS。
おしゃれなカフェで、パフォーマンス部分がとっても高い位置にあるうえに床が光ってるから演者としてもやりやすいなぁと思う。しかも二階席もあってステージからも目線を合わせやすい。VIP席はだいたい上の階らしいのでちょうどいいのかも。
階段前にスタッフが立っていてVIPチケットのあるなしで通すのも悪くない。

私は素人のM女さんと一緒にSMショーをする予定だったんだけど、一か月くらい前に事務所で美花さんから「彼女はAYAさんと組んでSMショーして貰うことになったから、藍ちゃんは観客調教して」といわれ、当該M女さんからは「えー」と愚痴られ……。でもすまんよ、私にはなんか変える権限はなさそうだ。
AYAさんはSMショーに出たことがないらしく、それでお披露目みたいな感じで自分が女王様だってところを見せたいっていう希望だそうで、だったら自分の仲良しMさんと出ればいいのになぁと私もクサクサ。
だって仲良しで一緒に出ようねぇって話してたのに、横からさー。
なのでフライヤーの裏面はこんな感じ。

とはいっても上記理由から知り合いをイベントに誘うことはしなかったので、観客調教に乗るようなM男性はここには来てなさそうだしなぁとフロアを回りつつ、それなら観客調教より鞭の振り方講座の方がウケがいいのではと(勝手に)方向転換。日本人ってわりと自分をSって言いがちだから、時間いっぱい楽しくみんなで鞭で遊べました。こういうとき鞭の数だけいっぱいある自分に感謝。
その次のAYAさんのショーは楽屋でちょっと気になる話があって、それは「この日のために3メートルの鞭をオーダーした」ってやつ。3フィートじゃなくて3メートル!?って思ったら確かにメートルっぽかった。長い。
私は無理せずにねと受け手を務める彼女に言って、一階の舞台が良く見えるエントランスに近い場所でショーの始まりを待った。気持ちは彼女を寝取られる彼氏みたいなもの。ちょっと違うけど、なんか合ってる。そんな感じ。
いかにもSMショーっぽい始まりに、お笑いっぽくやった私とはえらい違いだなカッコいいなぁと思いつつ、すぐに始まったのは狸縛り。師匠がよく舞台でやるので私は見知った形だが、なんか違うという違和感。でも流派が違えばやり方も違うのかも、なんて考えたのもつかの間、両足を上げてM女が宙に浮いて留めたと思ったら、すぐに鋏でジョキジョキ縄を切りだした。「え?え??」しか出てこない。そういうショーなのだと取り繕うこともない、明らかに計算外の行動だった。(ほかの観客がどう思ったのかまでは気にする余裕がなかったのでわからないけど)
下ろすなり彼女に四つん這いになるよう指示を出したAYAさんは、一旦後ろに下がり、舞台に戻ってきたときには例の鞭を手にしていた。それを見た彼女が舞台端へと急いで向かうも動きがおかしい。そうして距離を測ることのないまま彼女がまだスタンバイもしていないのに、AYAさんは鞭を振り下ろした。カツン、と私の足元になにかが降ってきて、拾うとそれはM女として舞台に上がっている彼女の付けていたピアスだった。
ピアスが吹き飛んだ。
急いで舞台に目をやると、もう頭を抱えてとにかく鞭の乱舞をやり過ごそうとしているM女と、扱いきれない道具を振り回す女王様の姿。狸縛りに時間がかかっていたからきっと鞭の時間もそう長くないはず、と私は楽屋に向かった。
思った通り、彼女は下垂手になっていて神経損傷しているのは明らかだった。温かいおしぼりをもらって手首と腕に当てていると、美花さんとAYAさんが彼女を別室に連れて行った。どこか病院でも話し合ってるのかと思いきや出てきたのはやや憤慨してちょっと泣きべそをかいてる女の子だった。
「解決したからここだけの話にね」
ギャラについても後日ということだったけど、ジャイアント馬場の「その日に一番お金があるんだからその日にギャラはもらえ」という言葉に従い「今日、いまください」と粘り、会場を出てすぐゴールデンさんに電話をかけ、彼女を連れて行き施術をしてもらう約束をする。
治療をするとかお金を払うとか、そういうんじゃないな、と思った。(どっちの話もなかったけど)
関係がちゃんとできていたら違ったのかもしれない。舞台の上で相手をちゃんと見ていたら違っていたのかもしれない。彼女は不安のまま舞台に上がり、ただ恐怖し、体を痛め、そして寄り添って貰えなかった。少なくとも私はそう感じた。
「怪我に気づかなくてごめんね」「明日どこか病院に一緒に行こう」その言葉があれば彼女は泣かなかったかもしれない。一緒に出演するはずだった子が怪我をして泣いていれば見捨てて帰ることもできず、なんかお人好しなことをしているなと思いながらも放っておけなかった。
私は受け手が怪我をしたらちゃんと謝って、きちんと治るように動いてあげられる人でいたい。そう思った日だった。

